製造業の松本ESテックで一番初めに取る資格「玉掛け作業」についてお伝えします!

玉掛けのフック

新入社員、在籍社員問わず、松本ESテックの製造部門に所属する社員は、業務で必要な「資格」や「免許」の取得指示があります。この記事では当社社員が業務を実施する上で必要な「資格」や「免許」の中から、一番初めに取得する「玉掛け作業」について、その内容や必要な場面などをご紹介しながら詳しくお伝えします。

製造部門全社員が必要!「玉掛け作業」の資格

玉掛け作業後の業務に従事

製造部門の製造現場配属になると、多くの社員が会社の指示で一番初めに受講する技能講習は「玉掛け技能講習」です。労働安全衛生法では、つり上げ荷重が1トン以上のクレーン等の「玉掛け作業」は、「玉掛け技能講習」を修了した人でなければ業務に就くことが禁止されています。では「玉掛け作業」とはどのような作業かを以下に説明します。

「玉掛け」はこんな作業

「玉掛け」の作業は大きな物を持ち上げたり移動させたりするときに必要な作業です。例えば建築現場や製造現場では重いものを高い所に設置したり、資材を移動したり、積み荷、荷下ろしたりするために、クレーン、移動式クレーン、デリックなどの「起重機/きじゅうき」を使用しています。それらの起重機に専用の吊り具を使用し、荷を掛けたり外したりする作業が「玉掛け作業」です。この章では「玉掛け作業」が必要な場面や吊り具についてさらに詳しく記載します。

「玉掛け作業」が必要な現場

では具体的に「玉掛け作業」が必要な現場や場面を確認してみましょう。

建築現場で活躍するクレーンと玉掛け作業

【建設現場】 建築物の鉄骨やコンクリート、ブロック、パネルなど、重い建材を高い位置に設置する際に「玉掛け作業」が必要になります。玉掛け作業後クレーンを使用してこれらの建材や起重機を持ち上げ、正確な位置に配置します。

【製造工場】 様々な製造工場では、大型の機械部品や製品、材料をクレーンなどで移動させる際に「玉掛け作業」が行われます。例えば、自動車工場ではエンジンやボディシェルなどの大きな製品を移動する際には「玉掛け作業」が欠かせません。

港で活躍する玉掛けコンテナを持ち上げる

【港湾】 港では、船舶に貨物を積み降ろす際に「玉掛け作業」が行われます。コンテナや重い貨物をクレーンで持ち上げ、船舶の船倉に積み込むためには「玉掛け作業」が必要です。

【倉庫や物流センター】 倉庫や物流センターでは、商品の荷役作業や棚卸し作業において、「玉掛け作業」が必要となることがあります。大きな荷物を吊り上げて移動させることで、作業効率を向上させることができます。

母材をクレーンで運ぶ風景

【当社では】全ての工程で、「玉掛け作業」が発生します。幕張工場スリッターグループでは入荷した「電磁鋼板」の荷下ろしや、スリット機械までの移動、カット後の製品の積み荷などの作業時に「玉掛け作業」を行っています。白井工場では材料として幕張工場から移動した「電磁鋼板」の荷下ろしや、各工程内での製品、金型の移動などで「玉掛け作業」が日々発生しています。

玉掛け作業に必要な代表的な「吊り具」をご紹介

玉掛け作業後の様子

「玉掛け作業」には専用の「吊り具」があり、「荷」の特性や「作業現場」などから使用する「吊り具」を選定します。以下に代表的な「吊り具」と松本ESテックで使用している「コイル用の吊り具」をご紹介します。

玉掛けフック

【フック】 フックは、鉤(かぎ)のように先が曲がった形状でクレーンなどのロープやワイヤーに取り付けたり、直接荷物に引っ掛けたりして使用します。フックの連結部分に穴が開いている「アイフック」と連結具を付けて使用する「シャンクフック」が一般的です。フックの先は「外れ止め」がついているタイプとついていないタイプがあり、使用用途によって使い分けられています。フックの材質は耐荷重性と耐久性が高い金属が一般的です。

玉掛けワイヤーロープ

【スリング】 スリングは、吊り荷とフックなどの吊り具をつなぐもので、種類は多数ありますが、一般的に利用されるのは「ワイヤーロープスリング」「スリングベルト」「チェーンスリング」などです。「ワイヤーロープスリング」は金属線を複数本束ねたもので、両端にループやフックが取り付けられている吊り具でです。金属製であるため非常に強く、高い耐久性がありますが、重量があり取り扱いがやや難しい、型崩れが起きやすい、錆を防ぐメンテナンスが必要、などのデメリットもあります。「スリングベルト」はナイロンやポリエステルなどの繊維で作られているベルト状の吊り具で、いろいろな長さや幅、厚みのものがあります。素材が繊維であるため軽量で扱いが容易、製品や荷物に傷をつけることが少ないというメリットはありますが、耐久性が低く劣化が早い、湿気や化学薬品に弱いなど注意が必要です。「チェーンスリング」は金属製のリング状チェーンにフックやリングを組み合わせたものです。ワイヤーロープスリングやスリングベルトに比べると耐熱性があります。スリング部品の組み合わせにより様々な作業に対応できます。

バウ形シャックル

【シャックル】 シャックルとは、起重機に使用するスリングと重量物を確実に繋ぐための吊り金具で、金属製のU字型の部品の両端に、ピンやボルトをねじ込んで留めて使用します。耐荷重性と信頼性が高いため、安全性が重視される作業で広く使用されます。玉掛で使用されるシャックルは主に「バウ型」と「ストレート型」があります。「バウ型」はロープをかける所がふくらみのあるカーブを描いており、この湾曲した形状により複数のワイヤーロープなどをかけても重ならない様になっています。繋ぐものが1つの場合はU字型で直線的な形状の「ストレート型」が適しており、バウ型と比較すると軽量で安価です。

【アイボルト】 荷物を吊り上げる際に使用されるねじ状の吊り具で、ねじの頭部がリング状になっており、荷物やスリング、ワイヤーロープなど引っ掛けるための取り付け箇所として使用されます。(それ以外にもねじ部分が固定されチェーンを取り付けて使用されていることもあります。)

【アイナット】 アイナットは内部にねじがあり、外部にリングがついた部品です。アイボルトと同様に、荷物を吊り上げたり、何かをひっかけたりする際に使用されます。アイボルトがねじ部分を持つのに対し、アイナットは内部へのねじがあります。このねじとリングになっている部分を使用して他の部品と連結します。

建築現場でクレーンがクランプを使って枠を持ち上げている

【吊りクランプ】 重量のある鉄板、鉄骨、石、コンクリートなどの特定の部分を固定し挟んで持ち上げるための吊り具です。てこの原理を利用しており、荷物の形状や素材、重さなどに応じてさまざまなタイプがあり、目的に合わせて数種類が使い分けられています。ここでは代表的な「縦吊りクランプ」「横吊りクランプ」「ねじ式クランプ」についてご紹介します。今回はご紹介しませんが、このほかにも持ち上げる素材に適した「吊りクランプ」が複数あります。「縦吊りクランプ」は挟み口が縦方向下向きで、荷物の重さをつかむ力に変えて物を吊り上げます。鉄板などを垂直につかんで吊り上げる作業にむいています。「横吊りクランプ」はクランプの挟み口が横向きで、鉄板やH形鋼板、パイプなどを水平に吊り上げる際に使用します。「ねじ式クランプ」は対象物をねじで固定して持ち上げる構造のため、引っ張り方を選ばず利用できます。

【バキュームリフト】 平らな表面の荷物を持ち上げる際に使用される吊り具です。真空を利用して荷物を吸い付け、安定させることができます。ガラスや金属などの非粘着性の素材に効果的です。

【マグネット吊り具】 鉄や鋼鉄などの磁性材料を持ち上げる際に使用されます。強力な磁力を利用して荷物を吸着し、安定させることができます。特に金属加工工場や鋼業などで広く使用されています。

【吊り天秤】 荷物の重量を正確に測定するための器具で、荷物を吊り上げた状態で使用します。

当社で活躍中の専用吊り具をご紹介

前章でご紹介した「吊り具」の他に、松本ESテック株式会社で使用しているコイル用の吊り具を2つご紹介します。

コイル用Cフック

【Cフック】Cフックと呼ばれるコの字型の吊り具を使用しています。Cフックはコイルの内径(中心の穴)にアーム部分を差し込んで吊り揚げ移動させるため、電磁鋼板にキズをつける事がなく、運搬時の安定感に優れています。

コイル用トング

【トング】天秤状の本体からコイルを挟むためのアームが伸びている吊り具です。この吊り具も鋼材などの運搬に適した吊り具で幕張工場で使用しています。皆さんがご存知の「UFOキャッチャー」を思い浮かべていただくとわかりやすいかもしれません。重たい電磁鋼板(コイル)もこの吊り具で確実に移動する事ができます。

「玉掛け作業」で大切なこと

安全第一 safety first

最後に玉掛け作業で大切な事を以下に示します。作業に慣れてしまうと忘れがちな事があるかもしれません。時には初心に返り安全に作業を行うためにはどうすべきかを再確認することが大切です。

【安全第一】 作業中は常に安全第一、最優先です。安全装置の使用や個人保護具の着用は勿論ですが、作業場所の安全確保の他、危険予知のトレーニングなど、日常的に意識する事も大切です。

【適切な訓練と資格】 「玉掛け作業」に必要な適切な訓練を受け、作業をする上で必要な資格取得のための講習を受けなければなりません。作業する人は必要な知識や技能を習得し、安全で効率的に作業を行うことが求められます。

【作業準備】 事前の打ち合わせと準備を行います。荷物の重量や形状、作業場所の状況などを詳細に把握し、安全な作業手順を確認します。

【装置、用具、荷物の確認】 使用する装置や用具、荷物が安全かつ適切な状態であることを確認します。装置の点検や荷物の吊り具の選定を行い、荷物を適切に取り付けます。この他、吊り具などの定期的なチェックやメンテナンスも大切です。

【適切なコミュニケーション】作業員同士、クレーン操縦者、指揮者とコミュニケーションをとり、作業の進行状況や安全上の問題について連絡し合います。

【周囲の安全確保】 作業中は周囲の安全を確保します。他の作業員や通行人への危険を防ぐため、作業エリアを適切に封鎖したり、声がけを行なったりなど、安全第一で作業を行います。

「玉掛け作業」資格取得

吊り上げ荷重が1トン未満のクレーン、移動式クレーン、デリツクの「玉掛け作業」に従事するには「玉掛け作業特別教育」を受講する必要があります。講習は学科、実技併せて9時間を有し、修了証が発行されます。制限荷重1t以上の揚貨装置及びつり上げ荷重1t以上のクレーン、移動式クレーンもしくはデリックの「玉掛け作業」に従事する場合は「玉掛け作業技能講習」を受講します。学科、実技講習は合計最長19時間を有し修了証が発行されます(保有資格によって講習の一部が免除される場合もあります)。どちらも労働安全衛生法(特別教育:第59条、技能講習:第61条)、クレーン等安全規則(特別教育:第222条、技能講習:第221条)などにより教育の実施が義務付けられています。

まとめ

床上操作式クレーンと玉掛け

様々な現場での「玉掛け作業」はクレーン操作のように目立つ作業ではありませんが、詳細を確認すると吊り具の多さや特徴、メンテナンス方法など、安全に作業を行うための知識や経験が必要な作業である事がわかりました。扱う荷によって使用する吊り具は異なりますが、様々な業界で活用できる資格であり、技術です。この「玉掛け作業」を正確に、確実に完了させることが「安全な荷物の移動」には必要不可欠です。「玉掛け作業」が完了すると荷物移動のため、次の工程である様々な「クレーンの操作」に移ります。次回のコラムは「クレーン操作」の資格について、松本ESテック内の例を上げながらお伝えします。