社員の学びを支える社内オーダーセミナー

社員教育

2021年にスタートした松本ESテックの社内オーダーセミナーは、今年で5年目を迎えました。ポリテクセンター千葉のご担当者様にご協力いただきながら、昨年までに実施した講座は37講座、受講人数は延べ341人になりました。この記事では、松本ESテックならではの、社内オーダーセミナーについて、始まりのきっかけと、主な内容をお伝えします。

教育の必要性が議論された2021年

在職社員向けの教育が十分でなかった当時、「まずは管理する立場の社員を対象に、教育をする必要があるのではないか」という意見がありました。この議論が進んでいた頃、世界中がコロナ禍の影響を受け、経済活動や企業の動きも鈍化している時期でした。松本ESテックでは、この状況を「生産活動を調整し、繁忙期には難しい知識習得のための座学の時間を確保する」絶好の機会と捉え、プロジェクトがスタートします。同じ頃、松本ESテックがオープンセミナーでお世話になっていた、ポリテクセンター千葉のご担当者様から、オーダーセミナーのご紹介がありました。これから実施したい当社の教育プランを提示し、カリキュラムを共に考えていただき、オーダーセミナーが開催されることになりました。

現場で培われるOJT中心の教育

現場指導 OJT 教育

松本ESテックのような製造業の現場では、OJT(On-the-Job Training)を中心に教育を行っています。技術的な教育は、製品の製造ラインの中で、先輩技術者が指導する形で進められ、業務理解を少しずつ深めながら、一人前の技術者へと育てていきます。

OJT(On-the-Job Training)教育とは

実際の業務現場での実務を通じて、社員や従業員が必要な知識やスキルを習得する教育・研修方法です。上司や先輩社員が指導者となり、日常の業務を遂行しながら実践的な指導を行うことで、業務に直結したスキルを効果的に身につけることができます。

社内オーダーセミナーのスタート

オーダーセミナーがスタートした2021年は、管理職者向けのオーダーセミナーと、一般社員向けのオープンセミナーを中心に展開し、社員一人一人の学びの機会を広げる第一歩になりました。翌年の2022年以降はオーダーセミナー受講の対象を、全社員へと拡大し、役職や部門にかかわらず、必要な社員が参加するセミナーへと発展させました。

社員に合わせたオーダーセミナーとは

Excelセミナー 社員教育 オーダーセミナー

オーダーセミナーは、ポリテクセンター千葉のご担当者様、講義を行う講師の方、そして松本ESテック担当者が、一つひとつの講座について意見交換や打合せを重ね、講義内容をカスタマイズできる仕組みのセミナーです。131ある基本講座の中から1つを選び、会社の事業内容や直面している課題、受講予定者の年齢層や職歴などを細かく分析しながら、講義基本的なの流れやワークの必要性等を決めていきます。オーダーセミナー実施のためには、一定人数以上の参加が必要になりますが、会社が指定する会場に講師の先生が来てくださるため、現場の状況にあわせた学びの場を、実現できる点が大きな特徴です。まさに「痒いところに手が届く」セミナーとして、社員の学びを支えています。

異業種交流も可能なオープンセミナーとは

オープンセミナーは、ポリテクセンター千葉の会場内で実施される公開型のセミナーです。業種を問わずさまざまな企業の方が参加するため、学びの場であると同時に、異業種交流の機会にもなります。講座内容は基本的な考え方や知識を体系的に学べるのが特長です。そのため、「基礎から学び直したい」「同じような課題を抱える他企業の方と意見交換をしたい」という方にとって、とても有意義な場となっています。

人材育成に込められた経営層の想い

当時ポリテクセンター千葉様のインタビューの中で、松本ESテックの専務は以下のようにその考えを伝えています。

「我が社は電磁鋼帯の加工・加工製品を営業品目としています。電磁鋼帯に特化しているため、他の業界や他企業との交流が限定されてしまいます。そのため、社員にとってビジネス感覚が養われる職場環境とは言えませんでした。そこで、社員がビジネスワードに慣れ、経営視点に触れることで技術・品質の向上を図ることを目的に、生産性向上支援訓練を利用しました。生産性向上支援訓練を通して、社員には経済環境の変化を肌で感じ、最新の情報を知ってほしいと考えています。」

管理職者セミナーの内容と狙い

管理職者教育 マネジメント

管理職者向けのオーダーセミナーでは組織マネジメント分野に焦点をあて、「組織力強化」「リスクマネジメント」を中心にカリキュラムを組み、6コースを1年かけて受講しました。セミナーでは「組織を強くするには」「職場のリーダーに求められる資質とは」「リスクマネジメント」「原価に対する考え方」など、管理職に必要な幅広いテーマを学びます。管理職者としての判断力や組織運営力を高め、現場のリーダーとしての役割をより効果的に果たすことを目指しています。

初任層向けセミナー:基礎から学ぶステップ

豪華 研修弁当

品質管理の基本的な考え方や業務効率、5S活動、安全性など、初任層から中堅層を対象としたセミナーでは、製造業に携わる社員に欠かせない、基礎知識講座を受講できるよう計画しました。今すぐに必要なくても、今使えるものでなくても、基礎を知っているかどうかで、物事の考え方は大きく変わります。「知識の引き出しを増やしてほしい」という想いから、セミナー内容を検討しました。講義はできるだけ分かりやすく、平易な言葉で進めていただけるよう、ポリテクセンター千葉のご担当者様、講師の先生、そして当社担当者の三者で打ち合わせを行いました。また、現場には座学や発表、研修レポートが得意でない社員もいるため、少しでも前向きな気持ちで参加してもらえるよう、セミナー当日には「ちょっと豪華なお弁当」を用意し、学びやすい環境づくりにも工夫しています。

中堅層向けセミナー:経験を次の成長へ

一定期間以上の現場経験を積み、機械操作や製品の品質管理に関する専門的な知識を身につけた中堅層の社員にも、あえて、初任層と同じ基礎的なセミナーから、受講をスタートしました。これは、中堅層や熟練技術者にありがちな「初心を忘れた指導」を防ぐこと、そして指導の対象となる初任層と学びのフェーズを合わせることで、指導者の目線を初任層にそろえることが目的です。セミナーは、品質管理の基本や業務効率改善を中心にスケジュールしたため、改めて基礎を見直す機会となりました。中堅層は、これからの会社を支える中心的な存在です。技術職であれば現場における専門性と問題解決力が、管理職を目指す人材には組織運営力や人材マネジメント力が求められます。そのため、中堅層向けのセミナーは、更にステップアップを目指す社員にとって重要な学びの場となっています。

ベテラン層向けセミナー:技術と知識を次世代へ

ナレッジ教育 ベテラン

松本ESテック創業期から昭和にかけての技術指導OJT教育は、老舗製造業や中小企業でよく見られる「俺の背中を見て学べ」というスタイルが主流でした。このような教育を受けた社員は、様々な経験を通じて得た判断力や情報、さらには視覚、聴覚、触覚などの五感によって培われた「マイスター的な技術」を、生産活動の中で身につけています。こうして培われた技術や知識は、どのように効果的にアウトプットし、体系的に整理するかがとても重要です。更にその情報を次世代へ継承しつつ、常に最新の情報へと更新していくためには、具体的な取り組みが求められます。このような経緯からベテラン層向けには「ナレッジプラン」や「ベテラン層向けの知識整理・継承プログラム」などのセミナーを実施しました。これらのセミナーでは、知識の整理方法や継承のポイント、最新情報の取り込み方について学び、実践的なスキルを磨くことができます。

化学物質に関するセミナー

化学物質 表示

2024年の安全衛生法改正に伴い、当社では「化学物質規制に関する基礎知識」について、「安全に関するセミナー」をカスタマイズし、オーダーセミナーを実施しました。このセミナーは、製造現場の全社員を対象としたため、初任層からベテラン社員まで、全員が同一の知識を共有することが可能となりました。このような共通基盤の教育により、階層や経験年数に関係なく、一貫した安全意識を持つことが可能となります。

まとめ

フィッシュボーン 特性要因ず

いかがでしたか。今回は、一般的な講義内容を企業のニーズに沿ってカスタマイズできる、オーダーセミナーを活用した社内教育の取り組みについて、ご紹介しました。過去4年間に実施したオーダーセミナーは、単なる階層別教育にとどまらず、必要に応じて階層を超えた横断的な学びの機会を設け、社員がタイムリーに情報や知識を習得できる環境づくりを進めてきました。2025年も引き続きオーダーセミナーを実施中です。今後も開催したオーダーセミナーを更に詳しくご紹介していく予定です。